
一応人並みに音楽を聴いてきたつもりなので、音源の内容の良い悪い程度の判断はつくんだけど(もちろん、僕の好みに左右されていることは分かってます)、その客観的な視点をはるかに超えた、「シンクロするアルバム」ってのがあるんです、僕には。それを聴いていると、過呼吸状態に陥ってゼエゼエハアハアヒーヒー言いながら、ディアンジェロの裏ジャケの女よろしく、白目を剥いてわけのわからない世界に行ってしまいます。気が触れたようにトリップするもんだから、聴き終わった後は、大抵体調が悪くなったり関節が痛くなったりします。そのうち脱臼しそう。てか、呼吸困難になって死なないようにしよ…。で、トーリ・エイモスのサード「Boys For Pele」は、僕にとってそんなアルバムです。なんたって、本人が「あのアルバムで、私は三途の川を渡った」なんて言い放ちやがりましたからね。また、「このアルバムで、私ははじめて自分を完全に解き放つことができた」、とも。
ファースト「Little Earthquakes」とセカンド「Under The Pink」、特にファーストの方は、被レイプ体験をアカペラで歌ったり(『Me And A Gun』)、暴力的なまでの感情の激しさをピアノに叩きつけたりと(『Precious Things』)、この時点ですでに感情の起伏の激しい、エキセントリックな女性歌手ではあったんですが、それでも「Boys For Pele」の目くるめく狂気エロ(?)ワールドを聴いていると、確かにそうなんだろうなあと頷けます。なんというか、憑いてしまった音というか、正確には行き着く所まで行ってしまった音、というか。そこが僕の好みにピッタリです。僕はこういう、突き抜けた人、音というのが大好きなので。
天から降り注いだりオーロラのように煌いたりするベーゼンドルファー(ピアノ)と、時として気色悪いほどにガツガツと火花を散らしながら弾きまくるハープシコードを軸に、そこにホーン、ゴスペル・クワイア、パーカッション、(一部)打ち込みドラム、ストリングスを絡めるというスタイル。そんな演奏をバックにした、吐息交じりで囁いたりシャウトしたり声をひっくり返したりする、息遣い荒いトーリのボーカルが、超赤裸々。彼女のディープな心象風景を、歌声がこれでもかと曝け出してます。よく比較に挙げられていたケイト・ブッシュの声には、ここまで痛々しい赤裸々感覚は無いし(トーリの方がはるかにダウナーだしねえ)、ディープさを考えながら近い人を強いて言えば、親友のPJハーヴェイあたりかな?とは思うものの、「To Bring You My Love」でのPJが、ほとんど呪縛霊みたいに(美しい)怨念を迸らせていたのを聴くと、トーリの湿気や祈りとはまた違う気もする。うーん、ほんと独特。
そのあられもない心象風景の吐露が、僕の心に「シンクロ」するらしく、アルバムを聴いているとトーリが言うところの「三途の川」を渡って、彼岸に行ってしまえる…というわけ。冒頭「Beauty Quenn」で、四回Gの音がピアノで奏でられた後の「ヘイエ~~~~」っていう例のセイレーンみたいなあれだけで、気絶できます。過呼吸になります。その後は、地べたをのた打ち回りながら痙攣します。だから、「Boys For Pele」が客観的に聴いて本当に名盤なのかどうかはどうでもいいんです、僕には。超主観的に聴いて、白目を剥いてトランスできるわけなので。他人に勧めようとも思いませんし、これがこの世で一番凄いとも思ってません。それでいいと思ってます。涅槃三途の川あっちの世界トリップトランスシンクロ!これが僕の全て!
久しく、この手の文章を書いてなかったので、抑えていたものを迸らせてみました。ひかないで…。